週一回照明デザイナーの視点で切り取った折々の風景や気になる言葉を少しずつ綴っていきます。ALG本サイトwww.alg.jp
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人間と光の関わり方の歴史 – 未来に向けて

近年、光が人間の体と心に与える影響が非常に大きいことが分かってきた。そして光を単に物を照らす機能だけでなく、様々な用途にまで利用する動きが出てきている。光は医療や農業、可視光通信などにおいても利用されておりさらにその活用の巾が広がっている。

最近、光源としての光をこれまで調整することができた光の色、強さ、輝度などの要素に加え、スペクトルを調整して効果的に私達の生活に利用する様々な試みが行われている。

光のスペクトルを調整することでサーカディアンリズムを整え、より健康的な生活を送ることができるようにする研究も進んでおり、その検証実験が行われている。
また、太陽とほとんど同じスペクトルを持つ光源による人工太陽照明も登場し、厳密に色彩を識別する必要のある分野などで利用されている。

特定の波長の可視光線のみを調整した光も作ることができるようになっている。
バイオレットライトは近年近視の進行を抑制することができるということが判明した光だが、LEDや蛍光灯にはほとんど含まれていず、UVカットガラスもバイオレットライトは通さない。そのため現代社会は室内においてバイオレットライトが不足しており、その影響が世界的な近視の増大にもかかわっているのではないかと言われている。
そのバイオレットライトを含む光源の照明器具もいくつか製品化されており、今後バイオレットライトの効用を利用できる器具の開発が期待されている。

これからの光環境は、従来構築してきた照明計画に新しくスペクトルの設定計画も加えたより人間の生態に寄与する照明計画が必要とされるだろう。

照明の分野において技術開発により新たな光源を得ることで、快適で健康的な光環境実現の設計手法は今後ますますヴァラエティー豊かになっていくだろう。しかしその基盤には光に対する科学的な知識をもとにした綿密な計画が重要であり、照明デザイナーはその重要な責務を担っていると言える。

ソサエティー5.0は人間中心の豊かな社会を目指している。これまでになかった技術の組み合わせやシステムにより新たな改革による活力ある社会の実現が目標である。それには一人一人が発展や改革に必要な力をつけていきいきと快適に暮らせることができるよう個々人の意識改革が重要であるとしている。

今後照明の分野においても個々人が光の持つ有益性などについて知識を持ち、効果的に光に対応することができるように啓蒙し、働きかけていくことが大切であろう。そして最新テクノロジーを駆使しながら新たに生み出す光環境が人間生活をより健康的で豊かなものとすることができるように、我々照明デザイナーは社会の動きを鑑みながら照明の計画において日々研究を重ね、実績を積んでいくことが求められている使命ではないかと考える。