週一回照明デザイナーの視点で切り取った折々の風景や気になる言葉を少しずつ綴っていきます。ALG本サイトwww.alg.jp
     ALG

今こそ新しい光環境を―陰翳礼讃と共に1

Anyoin09_1024
―たそがれ時―
太陽が沈んでその残光がやわらかく残り、明るい昼から暗い夜へ移り変わる間のほの明るい時間帯です。
人やものが皆、弱いけれども優しくて穏やかな光に包まれて、ほのかな陰翳が生まれ、静かに美しく見えるひと時です。

日本人は古来から、このたそがれ時の様な柔らかくて弱い光を建築の中に取り込みながら、そこから生まれる陰翳に満ちた光環境を美しく演出してきました。

夏の日差しを防ぐために軒の出が深い古来の日本建築では、自然の太陽光は直接室内に入らず、庭の石に反射したりしながら弱い光となって室内に導かれます。
その弱い光は障子を通したりしながら、室内に広がりさらに弱い光となります。そして室内には陰翳が生まれ、その陰翳が作り出すほの暗い環境の中で日本人は細やかな感性で美しいものを作り出してきました。

自然に対抗するのではなく、自然を受け入れ順応しながら、その自然環境を繊細な感性を持って工夫し生かしてきた事は日本人の文化といえます。その文化は貴重なものとして受け継いでいきたいものです。

現在の日本の光環境をみてみると、蛍光灯の普及と共に明るさを求め続けてきた結果、明る過ぎる光環境となってしまいました。
蛍光灯による白い光で夜を昼のように明るく照らす、というように「あかりを灯す」ことが、とにかく「明るく照らす」という行為になってしまったといえるのではないでしょうか。

そして今、日本では大震災後節電が意識される中、「あかりを灯す」ことがどういう事なのか、適切な照明とはどうあると良いのか、など光環境について根本的に問い直されています。
光は暗い部分があってこそ明るく感じます。現代建築に於いて、全てを明るく照らすのではなく、必要な所に必要な光を与え、ほの暗い所と明るい所を作り出すことで、明るさを効果的に演出することができます。
また自然光を効果的に取り入れ、天候や時間により調光その他で光の明るさを調節し、また季節により色温度などを変化させるなどの細かな配慮が望まれます。
今まで照明計画で行ってきたことをその意義を再確認しながら、利用者の理解と共感を得てさらなる実践に結び付けていく必要性が今まさに生まれています。

■関連記事
「今こそ新しい光環境を―陰翳礼讃と共に2」