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日本人と灯り2―光への繊細な感覚


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前回のトピックス「日本人と灯り-1」では日本人と灯りの関わりの歴史から現在の照明を考えてみた。科学技術の進歩から、建築様式や構法そしてそれに伴い照明文化も大きく変化した。そして日本人の光の作法や感性も変化してきた。

白っぽい照明である蛍光灯は経済性も高く、効率的な照明ができるため、生産性を重んじる日本人に好まれ、一般に広く普及し各家庭でも多く使われてきた。 工場など生産性を重視する空間以外の職場や学校空間、家庭においてでも蛍光灯の使用が多く、また照度も高い照明器具を設置して日本人は明る過ぎるほ どの明るさを求めて照明を行ってきた。

その明るい照明に照らされた空間に慣れてしまった為か、日本人の本来持っていた仄(ほの)明るさや薄暗さを味わい、光と陰のバランスを楽しむような光への繊細な感覚は乏しくなってしまった様に感じる。

2011年3月11日の大震災以後、明るさを求め過ぎていた日本人の姿勢に警鐘が鳴らされ、LEDの登場でより省エネ性が高く、快適な光環境の実現を求める声が上がってきたのは周知の通りである。 そして人々の照明に対する関心も高くなり、徐々に光を能動的に楽しむ傾向が以前より高くなってきた。  しかし、一方ではパソコンや携帯電話、スマートフォンの使用により現代人の目は酷使され、精神的にも緊張度の高い生活になっている。そのような状況であるからこそ、落ち着いた気持ちになれて自分を取り戻せるような光環境が必要なのではないだろうか。繊細な光の感覚を持ってきた日本人の感性でこそ、豊かで快適で健康的な光環境の構築が可能であるのではないだろうか。

体や精神に与える光の影響は大きい。生活の質を上げ、快適で健康的な活動をしていくために、季節、時刻、天候、体調、精神状態、使用目的に応じて光をデザインしコントロールし、効率的効果的に利用することでより豊かで充実した生活に繋がっていくはずだ。 照明の光を受け身で捉えがちであった過去を経て、能動的に照明の光をコントロールしてより高い生活の質に繋げる時代が今まさに始まろうとしている。
照明デザイナーとして理想的な光環境に近づけるようなシステムや利用の仕方などの提案をすることで思いやりのある感性豊かな日本の社会の実現に少しでも寄与できるように努力したい。

 

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写真:銀山温泉 藤屋旅館 (C) Ano Daichi