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日本人と灯り6―想いを込めた燈篭の灯り

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灯籠は飛鳥時代、仏教の伝来と共に渡来し、奈良時代から寺院建築が盛んになると共に多く作られるようになり、平安時代には寺院だけでなく、神社の献灯としても使用されるようになった屋外用の照明である。燈篭は氏子や崇敬者により寄進されることが多く、個人の想いが託された灯りであった。

仏教において、お香、花、燈明を捧げることが供養の基本である。 寺院では、燈明は特に重要で、寺院を照らすことにより、浄土を再現する意味合いもあったと言われている。 また、仏像に清浄な灯りを献じるためにもともとは仏堂の前面に燈籠は設置された。

神道では祭りの重要な儀式は、明かりを消して暗闇の中で行われることが多かった。 しかし、奈良時代に行われた仏教と神道の混合を図る目的で行われた神仏習合により、神社の境内にも燈篭が取り入れられるようになった。 現在でも神事には燈籠に献灯が行われている。約800年前から行われている春日大社の中元万燈篭では約3000基の石燈篭、釣燈篭に灯りが灯され、境内を燈篭の光が幽玄な雰囲気で包み込む。

 

鎌倉時代には素朴で力強い形をしたものが多く作られ、室町、桃山時代には小型化して力強さは薄れていったといわれている。 後に庭園文化が発達すると宗教に関連したもの以外に庭園内に観賞用として設置されるようになっていった。また、茶道が確立されると、燈籠を詫び寂びの象徴として照明用も兼ねて路地の要所に配置するようになっていき、外部照明としての機能を持ち始める。

燈篭の素材としては石を使ったものが多いが、木製や陶製、金属製(銅製、鉄製)のものまでいろいろある。石は主に御影石(花崗岩)が使われている。 現在でも花崗岩の産地では伝統的な技術が受け継がれて燈籠の製作が行われている。

形状は様々なタイプのものがある。
春日型燈篭―一般的に寺社に見られる高さのある形のもの。
雪見型燈篭―鑑賞用のもので庭園に設置するもの。 庭園の池近くに設置して池の水面を灯りで照らして鑑賞するものもある。
釣燈篭―建物の軒先に吊るす燈篭。
岬燈篭―雪見型から足の部分を除いたもので護岸石組の突端に設置するもので灯台を模している。
雪見型燈篭としては、金沢兼六園の徽軫燈篭(ことじとうろう)が有名である。
この燈篭は二本足で立っており、橋や池、横にあるもみじの木の風景と一体となって美しい光景を生み出している。

 

遠い昔の人々にとって、燈籠の灯りには、家内安全、商売繁盛、武運長久などの願を込めたり、庭園を美しく演出するものとしての想いが込められていた。 そのことに想いを馳せると、より一層深い味わいのある灯りとして見えてくるのではないだろうか。

 

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