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「光の世紀」に向けて – 光触媒技術

私達の生活に欠かせない太陽光。そして私達の生活を豊かにする人工の光。人間は光を利用することによって様々な分野で豊かさを得られるようになった。いくつかの例を挙げてその光の利用法をみてみる。今回は「光触媒技術」について取り上げる。

光触媒は、光(紫外光)のエネルギーによって有機物の汚れを分解したり、細菌の不活性化を行う物質の総称である。1967年に当時東大の本多助教授と藤嶋大学院生が発見し、1990年代半ば頃から研究開発が進み、様々な分野に応用されてきた。人体には無害で除菌・消臭・防汚・VOC(揮発性有機化合物)の低減効果などの機能を持ち、安全、安心、快適な生活空間を創り出すことが可能な物質である。

代表的な光触媒活性化物質としては酸化チタンがあり、紫外光を吸収すると「有機物の分解作用」と「超親水作用」を発揮する。これは光を照射しただけで有害物質の処理を行うことができると共に水がついても表面で水滴にならずに水が流れ落ちるという性質である。

この性質を利用して様々な製品が実用化されている。有害物質を処理する性質を利用した例として、建物外部のタイルや塗装があり、超親水作用は、防曇加工技術として応用され、光触媒ガラスなどが製品化されている。

道路灯や車のサイドミラーなどを酸化チタンでコーティングすると超親水作用で水がついても水滴にならずに流れ落ち、雨天時の視認性が高くなる。また、雨などにより自然に表面が洗浄されてセルフクリーニング機能を発揮する。この機能は、外壁やテントシート、住宅用窓ガラスなどにも応用されている。洗剤を使わず雨や散水だけで洗浄できるため、地球環境にもやさしい機能と言えるだろう。

また光触媒をコーティングしたビルの外壁や屋根などは雨による水の膜ができ、その水が蒸発するときに潜熱を奪って周囲の温度を低下させる効果があることも確認されており、省エネ効果も期待できる。

光触媒には抗菌抗ウィルス効果もあり、手術室の壁や床を酸化チタンでコーティングし、ブラックライト(紫外光)を照射するだけで殺菌処理を行うことが病院などで実践されている。

従来の酸化チタンは、紫外領域の380nm以下の波長の光を吸収するため、可視光である蛍光灯などの光源ではごく一部しか光触媒反応に寄与できなかった。しかし近年、400~600nmの可視光にも応答する光触媒が開発され、LED照明にも対応することができ、応用範囲が広がっている。
人にも地球にもやさしく効果が半永久的である光触媒技術は、衛生的で快適な環境づくりの要素として今後ますますその需要は増えていくことだろう。持続可能な「光の世紀」に相応しい光を利用する技術としてさらに高い機能を持つ製品の開発を期待したい。