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ステンドグラスの歴史5-衰退期

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16世紀・17世紀には、宗教改革の名の元にステンドグラスが破壊され、残念なことに多くの名作品が喪失されてしまった。

18世紀からは技法の発展は滞り、それまで称賛されてきた中世の美術を当時の人々は軽視するようになっていきステンドグラスの衰退期となる。

ステンドグラスは鉛線の間に色ガラスのピースを用いることにより魅力的な造形が生まれている。しかし油絵のように細部を正確に表現しようとする傾向が生まれ、鉛線が邪魔になり尊重されず、絵画の模倣のためにガラスピースを大きくしてしまい、本来のステンドグラスの魅力が失われてしまう。

また、当時のステンドグラス作家は絵画の写実主義と遠近法などの3次元的空間表現を模倣しようとしたがうまくいかなかった。

もともとステンドグラスは光の透過性に依存しており、絵画とは根本的に異なっているにも関わらず、絵画的要素をステンドグラスに求めたためにステンドグラスの衰退を招いてしまうのだ。

聖職者たちも教会内の光度に疑問を持ち、もっと明るいものを好むようになり、伝統的な模様に代わって幾何学的な模様のステンドグラスが流行して行く。

この時期には、時代の流れと共にステンドグラスの魅力が損なわれてその価値や評価が下がり、絵付け技師たちも仕事を失って減少してしまった。まさにステンドグラスの冬の時代と言えるだろう。

 

photo by Leo Reynolds

 

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