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バロック建築2―権威の象徴としての聖堂

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イタリアのバロック建築の巨匠ベルニーニと並びバロックを代表する建築家に、フランチェスコ・ボッロミーニ(1599年-1667年)がいる。彼はベルニーニの古典主義的で端正な作品に比べて曲面を多用し幻想的な効果を上げることを得意とし、後のバロック建築に大きな影響を与えた。

バロック建築は、宗教改革によって低下したカトリック教会の政治的権威を芸術活動によって補おうとして始まったもので、当時のローマでの主要な仕事は、すべて法王庁につながっていた。 ボッロミーニはサン・ジョバンニ・イン・ラテラ大聖堂の改修工事などを引き受けている。

「サン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂」はローマにあるカトリック教会の小さな聖堂で1682年にボッロミーニの死後、甥の手により完成した。クワトロ・フォンターネは四つの噴水と言う意味である。

外観は統一性のない表面で、曲線、曲面が多くあり、ダイナミックな波立つような凹凸となっていて印象的だ。教会内部は3層構造で、地表面の下層部、穹隅(ドームの円形プランから多角形プランへの移行部を構成する部分)の移行層、格間のある楕円形のドーム部分となっており複雑である。

楕円形のドーム内壁には八角形と十字形と六角形を組み合わせた格間が施され、上部にいくに従い、格間が狭くなっている。これは実際よりも高さを感じる効果を出している。

ドームは光を天窓と側面の四か所の窓から取り入れている。射し込む光によって格間の模様に様々な表情が生まれ、幻想的で美しい空間を造り出している。そしてドーム全体を気品に満ちた雰囲気で包んでいる。

 

ボッロミーニの作品は「高貴なるローマの内外において、数多くの素晴らしい建築作品のうちに多様な美しい様式を実現したばかりでなく、他の誰もが未だ達成し得なかった高貴さと気品とをこの都市に与えた」と称賛されていた。

このサン・カルロ・アッレ・クワトロ・フォンターネ聖堂のドームの光による見事な演出は、見る人誰をも魅了するものとなっていることは間違いないだろう。

Photo by LovioAndronico

 

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