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天から差しこむ光の音―笙(しょう)

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雅楽は奈良時代から伝わる日本の音楽に、アジア大陸の諸国から伝わった音楽が融合し日本化した芸術で、10世紀頃に形態が成立し現在まで伝承されている世界最古のオーケストラと言えるものだ。

雅楽は8種類の楽器で構成されるが、中心的な役割を担うのは管楽器でその代表的なものは「笙」(しょう)、「篳篥」(ひちりき)、「龍笛」(りゅうてき)だ。

「篳篥」は縦笛で古代から『地上の音を表す』とされる。 「龍笛」は横笛で天と地を行き交う龍の鳴き声を表しているとされて『天と地の間の空間』を象徴している。
「笙」は17本の竹を束ねたような形の笛で15本の竹の根元に金属のリードが付いており、息を吸ったり吐いたりすることでそのリードが振動して音となる。

「笙」は和音を奏でるのが主で、他の楽器の音を包み込むような役割だ。 その形は鳳凰が翼を立てている姿とされ、古代からその音色は『天から差しこむ光』を表すとされてきた。 昔の人達が、天から差す光として感じていた笙の音色は現代の私達にも同じように、透明で美しい天からの光として感じられる。 千年以上も前の日本人が今の私達と変わらない感性を持ち、同じように「光を感じる音」として聞いていた事を思うとその響きが美しい音の波となって心の琴線に響いてくる…。

雅楽は、『天、地、光』 を象徴し、宇宙を音楽で表現している。
触れる事のできない音の世界は、目の前に形や色となって現れる事はない。 しかし、一度目をつむって奏でられる音色に耳を傾ければ、様々なイメージが脳裏に浮かんでくる。
古代の日本人が音で作り出した宇宙であることを想いながら雅楽を聞いてみると、また違った深い味わいを感じるのではないだろうか。