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文様と光 (4) – 障子

今回は建築の建具である障子の文様について取り上げる。

建築において障子は視界を遮りながら光を通す建具として平安時代後期から利用されてきた。使用する紙には薄く、破れにくく、低価格であることが求められ、包み紙などの雑用の紙を用いていた。中でも美濃雑紙が障子紙の代表として評価されていた。

障子紙の中に、紋書院紙と呼ばれる透かし文様が入ったものがあり、1732年ごろからあったとの記録が残っている。美濃の他、築後柳川や肥後でも生産されていた。

美濃の紋書院紙には、七宝、亀甲、鹿子、菊唐草などの美しい文様が漉き込まれ、障子以外にも行灯や灯籠などにも用いられていたという。ほのかな明かりに透けて見える文様はやさしく人々の目を楽しませていたことだろう。

また、紙自体に自然な文様をつけたものとして落水紙がある。
落水紙とは和紙の材料を混ぜ合わせる糊である粘剤〔ねり〕を多量に入れて漉いた薄い地紙がまだ湿めっているときに、水を噴霧状に落として小さな穴をあけた紙である。
自然にできた文様は上品で味わい深く紙自体の表情に豊かさを生む。近年では落水紙に文様を入れたものもあり、文様がやさしく浮かび上がり和紙の持つ自然な風合いがいっそう引き立って見える。

照明器具のシェードに落水紙を使用すると、光源からの光がやさしく温かみのある光となって廻りに広がり心地良い光に包まれるような感覚を味わうことができる。

 

photo by haru_q