週一回照明デザイナーの視点で切り取った折々の風景や気になる言葉を少しずつ綴っていきます。ALG本サイトwww.alg.jp
     ALG

春の妖精

640px-Far_East_Amur_adonis_Adonis_ramosa
厳しい冬の季節が終わりに近づき、寒さが緩んでくる頃になると咲く福寿草。 春の訪れを知らせてくれる花として知られている。

福寿草は2月頃に地下の根茎より茎を地上に出し、直系3cmほどの光沢のある黄金色の花を咲かせる。 そして束の間の春を謳歌するように、4月までの短い間だけ花を咲かせて6月ごろには葉も枯れてしまい、地下で休眠する。

福寿草のように春先に花を咲かせ、夏まで葉をつけた後、枯れて地下で眠る草花を「スプリング・エフェメラル」と呼ぶ。 意味は「春の儚いものたち」で「春の妖精」とも呼ばれている。

落葉広葉樹林では冬には葉が落ち、林の中には陽射しが良く通るようになる。 冬の間、春の妖精たちは寒さの中、暖かい太陽光を受けながら落ち葉に覆われた地面の下で静かに花を咲かせる準備をしている。

 

春の決して強いとは言えない光が射す場所。 そんな束の間のほんわかした場所でしっかりとその光を受け止め、待ちかねた早い春を彩り、花を咲かせる春の妖精たち。
早春の林の中、密やかに光を受けて可憐に咲く美しい花々たちにも冬の終わりの光による命の息吹を感じてほしい。
何気ないけれど、ささやかな幸せの瞬間。 そんな瞬間を感じられる事に感謝したい。