桜ーSAKURAー
桜の美しい時期になった。日本人にとってお花見は、春の楽しい風物詩である。
お花見の歴史をみると花を眺める風習は、奈良時代からあった。 当時は主に梅の花を観賞しており、後の平安時代に桜を鑑賞するようになったという。 鎌倉、室町時代になると貴族の花見の風習が、武士階級にも広まった。 豊臣秀吉が行った「吉野の花見」や「醍醐の花見」は有名である。
江戸時代になると花見文化は一般庶民の間に広がり、桜の品種改良も盛んになりソメイヨシノが現われた。 江戸で最も有名だったのが、現上野恩賜公園の桜で、その後徳川吉宗が隅田川堤や飛鳥山に桜を植えて庶民の行楽を奨励し、多くの庶民が花見を楽しめるようになり、現在までお花見の風習が続いている。
最近では、提灯やLED照明でライトアップされた桜を見ることができる場所も多くなり、昼間とは異なった桜の表情を夜に楽しむことが出来る。 夜桜は暗い闇の中に浮かぶ淡いピンクの花の情景がドラマティックに見えて美しい。
―お花見をする時、人は美しい桜の花の下で、何を感じているのだろうか。
桜の下を歩くと、まるで花に見守られているようで優しい気持ちになる。 めぐる自然の営みに出会うことへの感動、生きて自然の美しさを楽しむことが出来る有難さ、など様々な思いが交錯する。 何よりも移り行く季節を感じながらやっと寒い冬を終えて暖かい春が来たという嬉しさを感じる。 加えて年度の始まりを4月としている日本では、卒業、入学、入社など人生の節目となる春には桜の花と共に、記憶に残る思い出が作られる。
豪華に咲き誇った桜が1週間程度で散ってしまう時には命の儚さを感じる人も多い。 そこに己の人生を重ねて、いつしか散る運命を考えながら、今確かに生きている喜びをしっかりと味わう人もいるだろう。 人により桜を見て感じることは違っているだろうが、自然と共生してきた日本人にとって桜は身近に自然の営みについて美しい姿で思い出させ、気づかせてくれる。そして人生を彩ってくれる。
貴方は今年どんな想いで桜を眺めたのだろう。そして来年はどんな想いで眺めることができるのだろう。 そう考えながら桜の花を見上げると、桜の花びらがそんな想いをやさしく受け止めて、微笑みながら咲いてくれているように思えてくる。
Photo: (C) T.Kiya