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明るさを求める姿勢から陰を楽しめる姿勢へー1


薄暗さとは光に対して陰の存在であるともいえます。

東日本大震災後、日本は節電提唱がされ、照明も減灯したり消灯したりと様々な対応を迫られています。

その中で出てきた疑問は、今まで照明が明る過ぎたのではないか、という疑問です。
確かに高度成長期に勤労を奨励し、効率よく勤労できる蛍光灯が照明の主流となり、住宅に於いても蛍光灯を多用するような状態が続き、より明るいものを求めて日本人は生活をして来ました。

1900年から1970年代までの事務室の推奨照度を見ると、1933年蛍光灯が発明される前には米国では200lx(ルクス)程度、日本と英国では80lx。1975年ごろには日本は推奨照度が800lx~1000lxと急激に上昇し、暮らし全体がかなり明るくなって来ました。

更に1994年から2001年に、新築または再改築されたオフィスビル252件の調査では、設計照度は平均630lxであるものの、実測照度は平均870lxで、60%以上が800lx以上で30%が1000lx以上の照度でありました。

このような実例を踏まえると、日本の標準とされる照明が明る過ぎる実態が見えてきます。
照度を適正な値に下げると同時に、今までより、暗い環境を良しとする使用者の受け止める感覚が求められてくるのではないのでしょうか。
薄暗い環境は不安感や恐怖感を覚える事がある一方で、思索にふけやすかったり、想像力を働かせやすかったり、精神を集中させやすいという、違った側面でのプラス面もあります。
生活の中で薄暗さと明るさの対比があってこそ、それぞれの環境でその良さを堪能できるのではないでしょうか。

 

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