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車と照明2-魅力的なふれあいの場所

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前回、車により豊かな居住性能を求める傾向が広がっていることについて書いたが、車の購入に関してはショールームの存在が大きい。

インターネット社会になり、ネット販売が盛んになっている今日でも、車の購入はメーカーの人が介在して取引が成立するという過程を経るのが一般的だ。ユーザーは実際にショールームに足を運び、車の現物を見て車種や色などを検討し、場合によっては試乗をして乗り心地を確認、納得する形で購入を決定する。

車という高い買い物をする大切な場所であるショールームの光環境に注目すると、従来は車を陳列し、ユーザーにしっかり見てもらうことを目的に色温度の高い白っぽい光で車を照らす形の実質性を重んじた光空間であった。LED照明による豊かな空間の演出性が可能になり、これからのショールームは光の幅広い演出でより豊かな空間になると考える。

メーカーにとっては、新しいブランドイメージやストーリーを発信したり、地域コミュニティーとの共生を図る開かれた空間としての利用ができ、 ユーザーにとっては車についての知識を広く深める空間に加えて、購入後情報を得ることができる信頼と安心感に満ちたリラックス空間としての利用ができるようなショールームとすることができる

ショールームは車と人が出あう場所であり、ユーザーにとっては車の購入を決める重要な場所である。また、購入後に整備を依頼したり、車の情報を得たりする場所でもある。

今までのショールームは、購入時のみに立ち寄る特別な場所であり、めったに足を踏み入れない特別な場所であった。しかし、車とユーザーの貴重なふれあいの場としてのショールームは、光により空間の質をアップし、利用法を多様化することでメーカーとの豊かなコミュニケーションが図れる魅力的な場にすることが可能である。

最近、本屋や雑貨店にカフェを併設したりする店舗が増えている。本を身近に感じ、ゆとりの雰囲気の中でコーヒーや本選びを楽しむことができる。それらの空間はインテリアや照明で癒されるような雰囲気を作り上げており、癒しの空間として好評である。

車のショールームにも本来の「車を紹介し、見せる」という目的にさらなる機能を持たせ、ユーザーや地域住民にも親しまれる空間とすることで、ショールームの存在価値をより高めることができるのではないだろうか。それには照明の果たす役割は大きいと考える。

車購入時意外にはなかなか足を踏み入れがたいイメージだったショールームを屋外の太陽光に近い色温度の光で照明計画して展示車を照らし、来訪者の打ち合わせスペースはさらに包み込むような心地よい光で照明することで温かい雰囲気が生まれ、気軽に入りやすい魅力的な空間とすることができるのではないだろうか。

 

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image: © Toyota Camry