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日本画と光4―光が際立つ水墨画・横山大観

横山大観「夜」15_1026_morii

 

近代日本絵画の巨匠と呼ばれる横山大観は日本画に近代化と革新をもたらした。 朦朧体(もうろうたい)と呼ばれる画風を確立し、後に水墨画でも空気と光を感じる画法で新境地を開いた。
朦朧体は日本画の伝統的な線描技法ではなく、色彩の濃淡により形態や構図、空気や光を表現する技法で没線描法の総称。明治30年代に大観や菱田春草らにより制作された。

日本画に欠かせなかった線描を排し西洋の空気遠近法を模倣したもので、洋画の外光派の影響を受けている。この技法は新しい日本画の表現法であったが当時の人々には受け入れられなかった。しかし大観が春草とアメリカとイギリスで開いた朦朧体の展覧会では、好評を得ることができた。 大観らは外遊をすることによって様々な影響を受け、結果的にはこの朦朧体からの脱却をし画法は進展をしていく。

この朦朧体の技法の経験は後の大観の水墨画へ大きく影響を与えた。 大観の大正から昭和にかけての水墨画は、日本における過去の水墨画のようにモノの形を描くだけではなく、空気や光を感じさせるようなものとなっている。モノの形が単純化される一方で空気や光の表現をより微妙な味わいで深めたものとなっているのだ。

 

「夜」という作品では墨により闇を表すのではなく、闇から浮かび上がる光を表そうとしている。大観が用いた技法はその後の墨絵に多大な影響を与えた。

伝統を重んじながらも新しい画風に挑戦し獲得していった大観は、まさに近代日本絵画発展に大きな功績を残した巨匠である。

 

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