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健康と光10―光と精神4

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光と精神4―知的作業と光

日本のオフィスは照度750lx、色温度 約5000Kで均一に照明されているのが一般的である。
事務所で行われる作業は情報処理作業、知識処理作業、知識創造作業など多岐に渡る。それぞれの作業が効率よく行うことができる最適な照明とはどういうものかについて様々な実験が行われ、研究されている。

単純作業では、作業そのものに集中する必要があり、高い覚醒と集中力が得られる高照度、高色温度の照明が適している。また、知識創造作業とも言うべき創造的な作業では、リラックスしてアイデアが湧く低照度、低色温度の照明が作業効率を上げることが分かっている。

事務所では会議が多い。その内容は定例会議や新製品開発のためのアイデア会議、など目的が様々である。会議の目的、参加者の思考傾向などにより、照明の設定を工夫すると効果的である。

活発な議論を期待する会議には、高照度、高色温度の照明を設定すれば集中できて効率よい会議となる。
議論が長引くような長時間の会議は、上記のような照明を連続していると、逆に集中力も衰え、緊張感が高まって疲労してしまう。途中に休憩時間を設け、低照度、低色温度の照明や低照度、高色温度の照明で参加者にリラックスして疲労を取ってもらうと、その後の会議もスムーズに運ぶ。

アイデアを募る会議では、諸事項の確認作業からブレインストーミング、アイデアの抽出、検討、決定などの会議過程がある。始めは会議が活性化するように、低照度、高色温度の照明をし、ブレインストーミングから最後の収束時期にかけては集中力が増す高照度、高色温度の照明に設定を変更できれば良い結果に繋がるだろう。

LEDの出現により、調色調光が容易になり、理想的な照明の条件を設定しやすくなった。
オフィスにおいて各人の作業中の照明は、好みとする設定が異なるため、タスク&アンビエント照明を採用して、各人が作業しやすい光環境を創造するオフィスも増えてきている。

照明の光を賢く利用することによって、人間の能力を十分に効率よく発揮し、豊かな生活に結びつけていくことは照明計画の使命とも感じる。

 

photo by Dan DeLuca

 

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