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SDGsと照明(4) – 女性が輝く光環境

国連の世界のSDGs進捗度の報告では、日本はSDGs目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」に関して評価が低かった。特に女性国会議員の比率の低さと男女の賃金格差が指摘された。

政府がジェンダー平等を意識して政府のSDGs推進本部が挙げた取り組みに「女性の輝く社会」という項目がある。女性の地位や職場での待遇などについての改革の必要性、男女平等を実現するための政策など政治的な内容により女性の輝く社会の実現を目指している。

照明計画の観点から「女性が輝く社会」の関連として職場での女性がより健康的に快適に働ける光環境はどのようなものが求められるのかを考えてみたい。

女性が健康的に働くためには、サーカディアンリズムに応じた光環境が望ましい。全体照明を朝から夕方にかけて調色調光することで本来の体のリズムを崩さない光環境をつくりたい。ホルモンの変化によって体調が不安定になりやすい女性にとり、サーカディアンリズムに応じた色温度の変化がある照明は、心身に対して優しいものとなる。

また、更衣室や最近増えてきたパウダールームは女性がそこでほっと一息つく場所、ありのままの自分に戻れる場所、仕事モードからプライベートタイムへの気持ちを切り替える場所となっている。その場所を朝は高い色温度の照明で覚醒と精神の高揚を引き出し、夕方は仕事を終えてほっと癒されるような低い色温度の照明の光とすることで仕事のオンオフが自然とできて快適な気分になれる。これらのセミプライベート空間は快適に仕事をするための必須の空間にこれからはなるかもしれない。

きれいにメイクができた時、女性は満足感と充実感に溢れ、生き生きと過ごすことができる。女性の顔のメイクは光の色温度によって見え方が変わってしまう。メイク直しをするパウダーコーナーの照明は、調色のできる照明にして色温度を選べるようにすると時によって変わる活動空間の光に適した美しいメイクを可能にできる。デートの場所の光で美しく見えるメイクを同じ色温度の光のもとでメイクすることで、自信をもってデートに臨める。

仕事と家庭を両立させながら生活する女性が多い現代。母として妻として女性として人間として生きる中で多くの役目をこなしながら働く女性は常に緊張とストレスを抱えながら生活している。光によってそれぞれの活動空間をより健康的でストレスフリーな環境にすることによって、より女性が活躍することができ、女性が輝く社会の実現につながっていくだろう。そしてこのように照明の光を効果的に利用することでSDGsの目標にも貢献できると考える。